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主宰の

「楽屋〜流れさるものはやがてなつかしき」 演出メモ

楽屋

​「楽屋〜流れ去るものはやがてなつかしき〜」は日本で最も上演された戯曲らしいです。


証明するデータを確認できていないので真偽のほどは不明ですが、多くの演劇人に愛されてきた作品だということは言うまでもありません。
 

そんな作品を、深海独自の解釈によって上演したいと思います。
 

原作を知る方、これまで「楽屋」を観劇された方は疑問を持つ点もあるかと思います。
 

想像することが演劇の醍醐味ではありますが、解釈の一助になればと思い演出メモを記します。

この作品は、「かもめ」を上演中の楽屋で俳優たちがそれぞれ演劇、役を演じることについて語る物語。
 

『観客の喝采を浴びるステージではなく、決して観客には見えない裏を見せること』

​『普遍性を見せること』

 

​この点を演出の肝としました。

​深海哲哉

舞台美術

作者、清水邦夫氏は「女優の楽屋は出入りが不自由な場所だからこそ、想像力がかきたてられる」と今作の執筆について述べています。舞台空間はメタファーとなる鏡に囲まれた閉鎖的な空間を作りました。ラストには開放された空間となるよう可動式に。鏡に囲まれたこの部屋は、合わせ鏡も示唆しています。

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時代設定

2030年頃と設定しています。「70年前に(作者は)死んじゃってるの」という原作のセリフにもあるように、初演時の1977年が本来の設定ですが、「かもめ」という戯曲の普遍性を考え、この戯曲がこれからも上演されている世界を想定しました。セリフは「130年前に死んじゃってるの」に、レコードプレーヤーはApple HomePodminiに、タバコは電子タバコへと変更しています。

 

​傷

俳優3人の死に直結する傷はそれぞれ隠すようにしました。原作のト書では傷を見せる描写ですが、私ならその傷は隠したいと思うので、その傷を飾ることで隠すようにしました。女優A.Bの2人が幽霊だと気付きにくくしている効果も生んでいます。

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Wステージ

女優Dがニーナのセリフを言っている最中に、本役(女優C)の本番中のシーンを追加しました。これも原作には無い描写です。女優Cの遠くには客席も見えます。ダブルステージという方法でプロンプターとしての渇望を表したいと思いました。

楽曲

使用楽曲

・Jet「Look what you've done」

・BLANKEY JET CITY「ガソリンの揺れかた」

・Procol Harum「A Whiter Shade of Pale(青い影)」

共通しているのはロックバンド。
特に「ガソリンの揺れかた」は出来る限り爆音で流すようにしました。女優Cのお気に入りの曲、という設定です。これまで幾度となく支えになった音楽にすら救われることのない状態を表したいと思いました。かたやラストで三人姉妹を演じる幽霊三人は、この曲に「せめて舞台では生きていきたい」という思いをのせます。アウトサイドから攻めたロックという選曲は、この物語の要になりました。

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転換

閉鎖的な空間の楽屋(裏)と、喝采を浴びるステージ(表)の開放さ。この対比を見せるため可動する壁を作り、ラストの三人姉妹のシーンはステージを想定させる空間にしました。「永遠に本番は来ないのに、楽屋で稽古をする俳優の性」を描いたのが原作の描写ですが、彼女たちの中ではその瞬間、楽屋での稽古ではなくステージなのです。

​ラストシーン

音楽が鳴っている中、誰もいない(見えない)楽屋。俳優たちの存在を感じていただきたいシーンです。

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